応援して頂けると嬉しいです。
↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村
こんばんは。ひろしプロジェクトです。
いつもこのブログをご覧頂きまして、ありがとうございます。
前回・前々回と「第10回バスマップサミット」の模様をご紹介しましたが、その翌日、私は東京へ飛びました。
何故かというと、こちらのセミナーに参加するためでありまして・・・・・・
交通エコロジー・モビリティ財団主催による
「第1回 地域バス交通活性化セミナー」という、地域交通を考えるセミナーが東京神田にて開催されました。
なにしろ、地方公共交通の再生に経営者の立場から取り組んでいる小嶋光信両備G代表・CEOと松本順みちのりHD代表取締役のお二方に、同じく地方公共交通の再生に学識経験者の立場で活躍されている加藤博和名大大学院准教授という御三方の講演は、なかなか聞く機会が無く、ましてやこの時期にとあって注目を集めました。
御三方の講演は以前から聞いてみたかったのと、「どなたでも参加できます」というフレーズが目に付き、「これは参加しないと!!」ということで参加してきました。
会場は神田駅前の綺麗なビル。
教室2つ分程といったスペースにはずらりと椅子が並び、最終的には100人以上の方が参加していました。
受付時にちらと名簿を見た限りには国交省関連とバス事業者の方々が大半で、私の様な他所はちょっと浮いてしまったかなぁとww。
関係者の挨拶の後、早速前半の講演がスタートします。
まずお話されたのは、両備Gの小嶋代表。
両備グループの紹介から始まり、「津エアポートライン」「和歌山電鉄」「中国バス」3社の再生事例紹介、そして昨秋の井笠鉄道に至った事例紹介から、現行法制度の不備と法改正の必要性、更には再建スキームとして「結果赤字補填型」から「見込経営努力型」への補助金制度有益化、所謂公設民営と公設民託の機能を併せ持った「準公設民営」方式が最適であるとの持論を唱えていました。
今回、小嶋氏からは「準公設民営」という新しい言葉が出てきましたが、同氏が予てから唱えていた「公設民託」に売り上げ増加とコスト削減といった経営努力を組み合わせた方式だそうで、見込経営努力型への補助金制度と併せて、4月1日に運行を開始する「井笠バスカンパニー」においてこの方式を導入するそうです。
(見切り発車にはなってしまうが・・・・とも仰っていましたが。)
小嶋代表としては、あくまで「公設民託」にこだわっているのでしょうが、これを実現するには法改正が必要であり、今年3月末までという時間制約の中で、ようやく「準公設民営」という形で落としどころが見つかった・・・・・というのが実状なのでしょうね。
これは今後の地域交通のあり方を占う一大実験になるのかなぁと思いました。
続いてお話されたのは、みちのりHDの松本代表取締役。
『実質的PFI』の持続性確保のために」と題し、「長期契約化」「原価基準撤廃」「動機付け」の補助金改革と「財務再構築」「経営改善」「戦略の再設定」の企業改革を行うことで、民営としてバス事業が成立し得ると主張されていました。
みちのりHDにおけるバス会社4社の改善事例の共有、ICカード導入効果(福島交通)、通学定期券販売強化と戦略的運賃値下げ(茨城交通)、八幡平市における一般路線・廃止代替・患者輸送バスからコミュニティバスへの再編(岩手県北バス)という具体例を紹介し、今後は「広域連携」により経営支援を続けてゆくという言葉で締めました。
元々企業再生を手がけていた方なので、講演の中で所々難しい言葉が出てきたりもしましたが、みちのりHD4社の改善事例は大変参考になりましたね。
休憩を挟み、後半は加藤博和名大大学院准教授の講演からスタートします。
加藤氏は「供給者目線を捨て、コミュニティビジネスへ進化しよう」という題目で講演。
規制緩和によって運転手賃金が5年で16.9%も減少(全産業では2.7%減)という限界的な状況と、なお見た目の低コストに走る市町村、そしてお願いにすがる住民・地域という実情こそが、井笠鉄道の「破綻」に噴出したと主張。
具体的な再生事例を3例取り上げ、地域公共交通は目的ではなく「手段」であって、収益事業から公共事業への発想の転換が必要であること、そして「目的の明確化」「適材適所」「一所懸命」「組織化」「カイゼン」という活性化・再生5ヵ条を示しつつ、事業者・市町村と利用者はじめ地域住民・沿線企業等が一堂に会する改正道路運送法による地域公共交通会議および地域公共交通活性化法による法定協議会を活用することで、単なる派遣事業ではない「半公設民託」と、更には両者を統合しヨーロッパの運輸連合並みに進化させた「地域公共交通運営協議会」構想を唱えました。
前半お二方の経営者という立場からのお話とは違って、利用者視点で地域公共交通をどのようにしていくべきかということについて、分かりやすい言葉でお話されていました。
事業者にとっては耳の痛い話も多かったように思えましたが、加藤氏がお話されたことって、実は多くの利用者も思っていること。
そのニーズを汲み取って改善出来る事業者のみが今後生き残っていけるのではないでしょうか。
そして鼎談へ。
今回の鼎談は、加藤氏が2氏にお話を伺う形で進んでいきました。
その中でまず話として出てきたのが、小嶋氏と松本氏がバス業界に入ったきっかけ(理由)についてでした。
銀行出身の小嶋氏は、オイルショック後に両備運輸入りした際、物流や港湾荷役業の前近代的状況を目の当たりにしたことを述懐しつつ、当時まだ見通しありとされた運輸業において、中国バスや井笠鉄道を見た時にほぼ同じ姿であったことに愕然としたとか。
一方、リースや投資会社を経て産業再生機構に入った松本氏は、バスと百貨店とテーマパークから案件企業を選べとされた際に“なんとなく”バス=九州産交を選んだそうで、観光面などの広域経済寄与も選択のポイントであった一方で、「赤字補助に加えて更なる国の支援が必要なのか?」という問題提起を念頭に置いて取り組んだエピソードを紹介されていました。
そして、今回のセミナーのメインテーマでもある「地方公共交通を今後どのようにしていくべきか」という話になったところで、小嶋氏が講演で説明された「準公設民営」についてのエピソードを紹介。
韓国のバスにおける評価システムや、社会目的であれば公が整備すべき(環境対策やバリアフリーに何故補助なのかと指摘された由)という部分に影響を受けているとした上で、日本の公共交通は戦術論ばかりが先んじて「戦略」や「目標」がないということ、そして公共交通という狭い範疇で物事を考えるのではなく、国・自治体が社会づくり・街づくりのグランドデザインをきちんと描いた上で、その中で公共交通が果たすべき役割を考えていくべきだと主張されていました。
一方の松本氏は、世界的に公共交通は公的運営が主流のなかで、民営中心の日本は異端であること、国内公営交通は今なお高コスト体質であり、民活の余地は多分にあるということ、一方で経路検索サイトの一例を挙げ、ITをはじめとした多方面でバスという存在がなお知られる余地があるとともに、老々介護ならぬ老々公共交通もまた今後の課題であることを主張されていました。
最後に、松本氏が「民間バス会社の事業経済性を変換させることで、国土の交通をミクロの部分まで良くすることが出来る。ただ、地域公共交通を支えてきた事業者グ
ループの体力維持向上のためには、悪戯な規制緩和による安全軽視の事業者との不公平な競合をこの辺で終わりにさせて頂きたい」と結んだのに対し、小嶋氏は「両備Gでは『エコ公共交通大国構想』を打ち出しているが、交通基本法から環境、高齢化社会を見据え、その中で公共交通が果たすべき役割を考えていくべきだ。」と結びました。
その2氏を前に講演中「行先表示で「車庫」行きは止めましょうよ~」と某バスの写真や、「背景の写真はイメージです」とし、○○バス路線概要図ときちんと消しつつも斜め下の「水戸駅北口」という文字はしっかり残した写真を示しながら、のりばが分からない→ポールが多すぎる→案内所も会社別→運転手で言うことが違う…等々実例を示すという加藤氏が、締めの部分で「バスの拠点が利用者・住民の拠り所となって、まさしく「車庫が行先」になることを祈念する」との旨で結んだのは、いかにも加藤氏らしいなぁ~と妙に納得してしまったりww。
というわけで、約3時間に渡って開催されたセミナーはあっという間に過ぎ、外を見ると既に真っ暗になっていましたが、滅多に聞けない話を聞けたことによる充実感が溢れてきて、「東京まで出てきて良かったなぁ~」というのが率直な感想でしたね。
今回特に印象に残ったのが、「準公設民営」という言葉が初めて出てきたことと、3氏のアプローチ(手法)が違えど目指す方向性は基本的に一緒であるということ。
地域毎で事情が異なるので、3氏の手法が全ての地域で通用するかどうかは更なる議論が必要ですが、この様な経営者・学識経験者がもっと増えることを期待すると共に、それ以前に行政側(特に自治体)はバスについてもっと勉強すべきだと、今回のセミナーに出席して強く感じました。
なんだか纏まっていない纏めになってしまいましたが、今回の一連のセミナーを通じて、より地方公共交通について感心を持ち勉強していこうと改めて思いました。
今回「第1回」と名乗っている以上、「第2回」「第3回」と続くことを期待したいですね。